ウゴービ(一般名:セマグルチド)の効果と副作用
肥満症治療にウゴービが適応に
2023年3月に厚生労働省は肥満症治療薬として、ウゴービ(一般名セマグルチド)の製造・販売を認可しました。肥満症治療薬としては、日本では従来はBMI35以上の肥満3度に相当する高度肥満症の治療薬として、サノレックス(一般名マジンドール)が健康保険適用で認められているだけでしたが、ウゴービは一般的な肥満1度のBMI27以上から健康保険適用で継続使用できる、画期的な治療薬です。
2023年10月現在、承認が終了し販売開始待ちという段階で、肥満症治療に関わる方々の期待を集めているところです。
ウゴービとは?
ウゴービはGLP-1受容体作動薬の一種です。GLP-1は人体に自然に存在するホルモンの一種で、胃腸の調整作用やインスリン分泌の促進などの働きがあります。同種の薬にはリベルサスなどの内服薬、オゼンピックなどの注射薬がありましたが、これは2型糖尿病の適応薬で、肥満症の治療としては保険診療外のものでした。
日本では、肥満症の治療薬として健康保険適用になっているものは内服薬のサノレックス(一般名マジンドール)だけでした。しかしこれはBMI35以上という高度肥満症の治療薬で、しかも覚醒作用のあるアンフェタミンに構造が似ているため処方の際、依存性に十分注意する必要があるなど、取り扱いの難しい薬でした。
しかしウゴービはBMI27以上と、肥満1度の状態から保険適用で継続使用できるため、使用ハードルの低い肥満治療薬として日本で初めて厚生労働省が製造・販売を承認したものです。
実際にBMI27といえば、175cm身長がある方では体重83kg、160cmの身長の方は70kgとごく普通にまわりにいそうな体型の方となり、治療開始できるハードルはあまり高くありません。
ウゴービの適応と効果
ウゴービは、肥満症であり、高血圧、脂質異常症、2型糖尿病のいずれかに罹患していて、食事、運動療法を行っても十分な効果が得られない方で、以下のどちらかの条件にあてはまる場合、健康保険適用で使用が承認されています。
- BMI が27以上で、肥満に関する11種類の疾患の2つ以上が該当する
- BMI が 35 以上
肥満症とは
肥満は標準以上に太っている状態をさす言葉で、肥満のために何らかの疾患を合併している場合や、そのリスクが高い場合を肥満症と言い、治療が必要とされることになります。これは高血圧と高血圧症の関係に似ているかもしれません。
BMIが25以上で、
- 耐糖能障害(2型糖尿病など)
- 高血圧
- 脂質異常症
- 高尿酸血症
- 脂肪肝(非アルコール性のもの)
- 脳血管障害
- 冠動脈障害
- 月経異常・不妊
- 睡眠時無呼吸症候群・肥満低換気症候群
- 股関節、膝関節の変形性関節症、変形性脊椎症、手指の変形性関節症等の運動器疾患
- 肥満関連腎臓病
という肥満関連の11種類の健康障害のうちどれか1つ以上を合併しているか、これらの健康障害をおこしやすい内蔵脂肪型肥満がある場合に「肥満症」と診断されます。
なお、内臓脂肪型肥満の目安は、男性で腹囲が85cm以上、女性では90cm以上ある場合とされています。
さらにBMIが35以上になると高度肥症と診断されることになります。
肥満症では、「肥満症」という病気であると診断され、十分その他の治療手段を試したにもかかわらず治療効果が得られなかった場合にはじめて薬物治療が開始できることになります。単に痩せたいという気持だけでは薬物治療をはじめることはできませんので、ご承知おきください。
ウゴービの効果とメカニズム
ウゴービは小腸から分泌されるGLP-1というホルモンと似た働きをする遺伝子組換のペプチド医薬品の一種で、ヒトGLP-1を受け入れる特定の場所であるGLP-1受容体と積極的に結合することで、効果を発揮します。
GLP-1は食事を摂ることで分泌されるホルモンです。GLP-1は作動する場所によって主に
- 食欲抑制
- 胃の運動抑制
- 血糖値の抑制
という3つの働きをします。
そのため、人工的にGLP-1受容体を刺激するウゴービが同様の働きをすることで、少ない食事で満腹感を得ることができること、胃の運動を抑制してゆっくり消化することで血糖値の急上昇を防ぐこと、食事によって血糖が増えたらインスリンを分泌して細胞がブドウ糖をエネルギーとして利用しやすくすることの3つの効果を発揮し、肥満解消につながっていく仕組みとなっています。
現状の保険診療での処方に関して
大学病院などの大病院で、6か月の保険診療+栄養指導を行った後に必要症例のみで、非常に敷居の高い処方条件となっており、ほとんど市場に出ていないのが実情です。また、当院含む個人クリニックでは処方を行うことができません。
当院での対応としては、医学的に適応のある患者様には、ご希望があれば自由診療にて処方する方針としております。
マンジャロ(ウゴービより優れた減量を持つ薬剤)、リベルサス(ウゴービと同成分の内服薬)、オゼンピック(ウゴービと同成分)を処方することができます。
ウゴービの用法
ウゴービは、固定された針つきのシリンジに入った形で提供される予定です。使用法は皮下注射で、0.25mg、0.5mg、1.0mg、1.7mg、2.4mgの5種類があります。
当初は0.25mgを週1度注射するところから始め、最終的には週1回2.4mgを注射します。その後は効果を見ながら適宜減量していきます。
あくまでも肥満症の治療目的の場合のみ、健康保険適用となる予定です(詳細は販売開始時に発表となります)。
ウゴービの副作用
ウゴービの現在公開されている添付文書に記載されている副作用は以下の通りです。
重大な副作用
低血糖(頻度不明)
低血糖により、強度の空腹感、冷や汗、動悸、手などのふるえ、めまい、吐き気、脱力感や倦怠感といった症状があらわれることがあります。重篤な場合意識を失う例もあります。これらの症状があらわれた場合は、適切にブドウ糖やジュースなどを摂取してください。
急性膵炎(0.1%)
激しい腹痛にともなって嘔吐などの症状があらわれた場合は、すぐに使用を中止して医療機関を受診してください。膵炎をおこした場合はウゴービの治療を中止し再投与は行わないでください。
胆嚢炎、胆管炎、胆汁うっ滞性黄疸(いずれも頻度不明)
これらの副作用によると思われる腹痛などの症状があらわれた場合には、ただちに受診して腹部超音波検査などを受けてください。
頻度の高いその他の副作用については、食欲減退、頭痛、吐き気・嘔吐、下痢、早期飽満感などの胃腸症状、疲労感や無力感など、注射部位の発赤などが報告されています。