のどの違和感について
のどは口の奥から声帯のあたりまでの部分を総称して言う言葉で、浅い方を咽頭、深い方を喉頭と言い、医療用語では総称して咽喉頭、一般的には「のど」と言います。のどに様々な違和感があって、のどが腫れている感じがする、のどが詰まった感じがする、のどがイガイガ、ザラザラするといった症状がおこることを咽喉頭異常感と言います。
こうした症状は、単にのどの疲れ、風邪、ストレスなどからきていることもありますが、咽喉頭炎(のどの風邪)、胃食道逆流症、内分泌疾患、咽頭がんや喉頭がんなどの疾患や心因的な原因によっておこっていることもあります。
のどの症状がおこったときに最初に受診すると良いのは耳鼻咽喉科です。そちらで専門的な検査を受けて、耳鼻咽喉科に関わる異常が見られないのに、まだつらい症状が続くときは、内分泌や全身性の疾患を疑って、それらを専門とする医療機関を受診してください。
当院ではとくに内分泌内科を標榜科目としておりますので、甲状腺の異常などに起因するのどの違和感について、専門的に調べることもできます。
のどの症状で耳鼻咽喉科や内科などを受診してもなかなか原因がつきとめられないなどの場合には、ぜひご相談ください。
のどの違和感から考えられる疾患
甲状腺疾患
バセドウ病
バセドウ病は甲状腺機能亢進症の代表的なものです。甲状腺はのど仏の下、前首の付け根の中葉あたりに位置して甲状腺ホルモンを分泌しています。甲状腺ホルモンは全身の代謝にかかわる重要なホルモンですが、甲状腺機能が亢進して過剰に分泌されると、動悸、発汗、指のふるえ、体重減少、不眠、イライラといった様々な症状があらわれます。また甲状腺の異常によってのどに違和感も生じます。20歳代後半から40歳代ぐらいと比較的若い女性に多い疾患で、発症の原因はわかっていませんが、自己免疫疾患の一つです。
主に薬物療法で治療しますが、稀に手術が必要になる場合もあります。
橋本病(慢性甲状腺炎)
橋本病はバセドウ病とは逆に、甲状腺機能が低下し、甲状腺ホルモンが不足した状態になる疾患ですが、初期症状は甲状腺の慢性的な炎症です。比較的珍しくない疾患で、多くの患者様は、無症状のまま推移しますが、時に進行して甲状腺機能低下に至ることがあります。
炎症がおこる原因ははっきりと分かっていませんが、自己免疫に関わっているのではないかと考えられています。
甲状腺の炎症によってのどに違和感が生じるほか、甲状腺ホルモンの低下によって気力の喪失、疲労感、全身のむくみ、体重増加、便秘、冷えなどを生じるようになります。
こちらも比較的若い女性に多い疾患で、内服による甲状腺ホルモンの補充で治療を行います。
亜急性甲状腺炎
甲状腺の組織が強い炎症によって壊れてしまう疾患で、原因はウイルス感染によるものと考えられています。甲状腺の炎症によって、首の付け根辺りが腫れて痛むほか、甲状腺の組織内に蓄積されていた甲状腺ホルモンが一度に放出されるため、一時的にバセドウ病と同様の動悸、発汗、指のふるえ、イライラといった症状があらわれます。
ステロイド薬や抗炎症薬の内服によって治療を行いますが、症状が激しい場合は入院の上点滴による治療を検討することもあります。
症状は急激に激しくなりますが、数か月で症状は改善していくことが一般的です。ただし、再燃しやすいことや、稀に甲状腺機能低下症が残ってしまうことがありますので、状態がよくなっても、医師の指示があるまで治療をしっかり続けることが大切です。
甲状腺腫瘤(甲状腺のしこり)
甲状腺にできたこぶのようなしこりです。ほとんどは良性腫瘍ですが稀に悪性のものもあります(5%程度)。悪性の場合でも、他の部位のがんより進行はゆっくりとしています。
初期のうちは、ほとんど症状がありません。指で触れるとしこりがある、首を前に倒すと違和感があるなどで気づく程度で、健康診断の触診でも99%は発見できません。ただし、頸部超音波検査を行うと、1~3割の方には腫瘤がみつかると言われているほど、珍しくない疾患です。
検査をして良性とわかっている場合、とくに症状がなければ治療の必要はありませんが、経過悪性化していないか、大きくなってきていないかなどについて観察を続けていきます。腫瘤が大きく違和感が強い場合や、検査で悪性と診断された場合は手術を行います。
喉の疾患
咽頭炎(いんとうえん)
咽頭とは、口をあけると見える扁桃腺の周辺のあたりで、一般的にのどと言われる部分です。この周辺にウイルスや細菌などに感染して炎症がおこっているのが咽頭炎で、のどの痛み、発熱といったいわゆる風邪の症状があらわれます。炎症によってのどが赤く腫れている様子が見えることもあります。
扁桃炎
口をあけるとのどの部分の両側に、うめぼしやクルミの実のように見える口蓋扁桃が、ウイルス、細菌などに感染して腫れてしまっている状態です。扁桃腺が真っ赤に腫れて、ときには化膿して膿が表面に白く点々と付着していることもあります。のどの強い痛み、飲み込みにくさなどに加え高熱を発することもあります。過労、ストレス、冷えなどで身体の免疫力が弱まっていると発症しやすくなります。
喉頭炎
喉頭はのどの奥にあって、咽頭の下から声帯をふくんで気管までの部分をさしています。喉頭の一番下にある喉頭蓋は食べ物を飲み込むときに気道を塞ぎ、気道に食物が入らないようにする役割を担っている重要な部分です。また、喉頭には声帯も含まれているため、この部分で炎症がおこると、のどの奥の痛みとともに、嗄れ声、咳、発熱などがあらわれ、喉頭蓋で炎症がおこると、気道が塞がれて窒息にいたることもあります。のどの奥に症状があらわれた場合は、すぐに耳鼻咽喉科を受診するようにしましょう。
逆流性食道炎
通常は食道と胃の境目は下部食道括約筋によってしっかりと蓋をされています。何らかの理由で、締めつけがゆるむと、強い酸性の胃酸や食物の分解酵素を含む胃の内容物が食道へと逆流して、食道粘膜に炎症をおこします。これが逆流性食道炎で、胸やけ、みぞおちの痛み、げっぷ、呑酸(すっぱいものが上がってくる)などのほか、咳、のどの痛みや違和感、のみこみにくさなどの症状があらわれます。とくに常に胸やけがあって、のどの痛み、風邪でもないのにでる咳などの症状がある方は、進行した逆流性食道炎かもしれません。一度専門医にかかって検査をうけてみることをお勧めします。
自律神経失調症・抑うつ
のどの奥に何かが詰まっているような感じがして、検査を受けてものどや食道、気管などに器質的な症状が見当たらない場合、咽喉頭異常感症疑われます。これは、ストレスや抑うつなどの心因的な原因で食道周辺の筋肉が異常に緊張することでおこると考えられており、のどの奥に球が詰まっているような感覚があることから、俗にヒステリー球ともよばれています。
根本的には圧迫の原因となるストレス要因を取り除くことが大切ですが、対症的に弱い抗不安薬や漢方薬などを処方して症状をおさえるようにします。こうした症状にお悩みの方はいつでもご相談ください。
当院で実施する検査・治療
問診で詳しく症状や経緯、日常生活や食生活などについてお聞きし、触診、血液検査による甲状腺ホルモン状態を確認し、さらに頸部超音波検査などを必要に応じて行います。
検査の結果、自律神経の乱れなどが主な原因となった場合、自律神経失調症や不眠症などの治療もあわせておこないます。
逆流性食道炎が疑われる場合は、消化器内科、咽喉頭炎が疑われる場合は耳鼻咽喉科など、連携する医療機関を紹介してスムーズに治療を受けることができるようにしております。