いびきとは
いびきは睡眠中におこる呼吸にともなう音のことです。いびきをかいてしまう原因は、睡眠中に何らかの原因で鼻、のどなどの気道が狭くなってしまい、無理矢理空気を通そうとする時にその部分が振動することによって発生する音です。睡眠中は筋肉がゆるむため顎が移動したり、舌が喉側に落ちたりして気道を塞ぐ形になることがいびきの主な原因です。
誰でも時にはいびきをかいてしまうことはありますが、毎日いびきをかいてしまうような場合は、何らかの疾患が原因となっている可能性もあります。
重篤な疾患が原因ではない場合でも、いびきによって睡眠の質は大きく低下しており、長時間寝ているつもりでも、疲れが抜けない、熟睡感を得られない、日中眠いなどで生活の質は大きく低下してしまいます。
なかなか自覚しにくいのがいびきの特徴ですが、家人から指摘があったなどの場合には、おはやめに医療機関を受診してください。
いびきをかく原因
鼻から気管までの上気道の部分を支える下顎の筋肉が眠ることによってゆるみ、舌の付け根から軟口蓋などが重力によって落ち込んでしまうと、気道が狭くなってしまいます。すると、無理に空気を通そうとして強く呼吸する際に狭くなった部分の粘膜がふるえることで音がでていびきが起こります。眠っている時は副交感神経優位となりますので、筋肉もゆるみます。そのため、こうした現象がおこりやすくなっているのですが、とくに鼻になんらかの問題があって口呼吸になっている場合、軟口蓋が落ち込みやすくなっていびきにつながる傾向があります。
いびきの種類
いびきには、散発性のものと習慣性のものがあります。
散発性のいびきは、お酒を飲んだ夜、疲れている夜などにかくいびきで、病的なものではありません。
一方習慣性のいびきは、ほとんど毎日、眠るといびきをかいてしまうケースで、何らかの疾患によるものや、気道の形状などが原因となっています。とくに習慣性のいびきで問題なのは、睡眠時無呼吸症候群にともなっておこるいびきです。睡眠時無呼吸症候群は眠っている間に気道が極端にせまくなることや、呼吸中枢からの指令経路の問題によって睡眠中に呼吸が何度もとまってしまう疾患で、睡眠中常に血液が低酸素・高炭酸ガス状態となり、身体へ負担がかかりつづけ、様々な合併症をおこし、時には突然死の危険さえある疾患です。また、無呼吸といびきの繰り返しによって極端に睡眠の質が低下し、日中の強い眠気、集中力の低下などから仕事や学業に影響が出るほか、運転や作業などで事故をおこしてしまう危険性も高くなります。
いびきをかきやすい人
肥満によって、上気道周辺にも脂肪がつくと、就寝中にそれが落ち込み、上気道を圧迫していびきをかきやすくなります。また骨格、とくに顔の骨格によっていびきをかきやすい方もいます。いびきは口腔の形に影響されやすく、歯並び、顎の大きさなどが増悪要因です。
さらに生活習慣などもいびきに影響しますし、加齢による筋力の衰えなども関連しています。
骨格
上気道の広さは骨格によって決まってくる部分もあります。そのため、次のような特徴のある方は、かならずしも全員ではありませんが、いびきをかきやすい傾向にあります。
- 下顎が小さめで後方にある
- 首が短く太め
- 舌が大きい、舌根部(舌のつけね)が太い
- 口をあけたときにのどの中央に垂れ下がった口蓋垂が長め
- 鼻中隔弯曲症(鼻の穴の左右を隔てる壁の部分が曲がっている)
など
生活習慣
- 肥満状態
- 口呼吸が多い
- 仰向けで寝るくせがある
- 副鼻腔炎などで鼻詰まりがある
- ストレスや疲労がたまり気味
- 就寝前にお酒を飲む
など
寝る前に飲酒をするくせのある方は、アルコールによって筋肉の弛緩度が高くなり、いびきをかきやすくなります。寝酒はその他にも消化器などに負担をかけやすいため、できるかぎりやめましょう。
また、口呼吸をしている人は、慢性鼻炎や慢性副鼻腔炎といった疾患が隠れているか、極端な鼻中隔弯曲症などで鼻の通りが悪くなっている場合もあります。早めに原因疾患をつきとめて適切な治療を行うことで、鼻呼吸となり、いびきが少なくなります。
さらに肥満はいびきの原因として上位を占めています。さらに肥満は睡眠時無呼吸症候群の原因ともなりやすいことが分かっています。その他の生活習慣病のリスクも高まりますので、標準体重を目標として減量をおこないましょう。
いびきの検査
習慣性のいびきで心配されるのは、睡眠時無呼吸症候群との合併です。そのため、家族からいびきを指摘されたケースや、睡眠不足の自覚などで検査を受けたい場合は、ご自宅で睡眠時の呼吸状態を調べる簡易検査を行います。鼻と指先にセンサーをつけ、特殊な装置で呼吸状態や血中酸素飽和度、脈拍などを計測する機器を貸し出して睡眠時にとりつけて眠っていただくだけの検査で、無呼吸状態などを判定できます。
いびきの治療
まずは原因疾患がないかどうかを確認します。その上で睡眠方法や食事など日常生活の改善、特殊な装置などによる呼吸補助の治療などを行い、骨格や気道の形状などによるいびきの場合には手術を検討することもあります。
睡眠時の姿勢(体位依存)
重力による気道の狭窄が原因の場合、横向で眠ることで周辺組織の落ち込み量が減少し、呼吸の状態が改善することがあります。簡易検査でも睡眠中の体位を観測していますので、その分析結果から、睡眠中の体位を工夫することで無呼吸状態が改善する場合もあります。
枕の高さ、マットレスの上半身部を少し持ち上げる、抱き枕を使うなど、症状にあった体位を工夫してみると良いでしょう。
寝酒を控える
アルコールは血管を拡げたり、筋肉を弛緩させたりする働きがあります。そのため、いびきをかいたり無呼吸がおこったりしやすくなります。寝酒は控えて、アルコールの過剰摂取を控えるようにしましょう。
標準体重を維持する
肥満によって上気道周辺で脂肪量が増えると、そのために就寝中、上気道周辺の組織が落ち込みやすくなり、気道を狭くしてしまいます。その他生活習慣病のリスクなども高まりますので、肥満状態の方(BMI25.0以上)は減量につとめ、標準体重を維持するようにしましょう。
標準体重は
標準体重(kg)=身長(m)2×22 |
で求めることができます。
減量は、カロリーコントロールと適切な運動で行いますが、最初から高い目標を掲げてしまうと続かなくなります。まずは身近な目標を定めてそれを達成したら次というように、持続可能な方法で行うことが大切です。むりな減量は決して健康のためになりません。
禁煙
喫煙は呼吸器系に大きなダメージを与えます。上気道の粘膜は炎症を繰り返し、肥厚するため、気道が狭くなり、いびきもかきやすくなります。その他にも血管障害なども含め様々な疾患のリスクとなりますので、喫煙習慣のある方には禁煙を強くお勧めします。
マウスピース治療
顎の形状によって舌がのどを塞ぎやすくなっている方は、習慣性のいびきを発症しやすくなります。そのような方には、その方それぞれの口の形にあわせたマウスピースで顎の位置や舌の位置を保持して睡眠の際の呼吸が楽になるようにする治療法があります。マウスピースは歯科医で製作しますので、連携する歯科医院を紹介いたします。
CPAP療法
睡眠時無呼吸症候群がある方の治療方法です。無呼吸スコアによって健康保険適用で治療を行うことができます。
睡眠時に特殊な装置にとりつけられたマスクを顔につけて、装置から空気を送り込むことによって、塞がれた気道を空気の陽圧で拡張し、呼吸を通す仕組みになっています。陽圧の程度、湿度のコントロールなどは装置できめ細かくコントロールすることができます。
CPAP療法が適用になる場合は、当院から装置をレンタルによって貸し出しします。装置の保守や消耗品の補充は当院がご紹介する保守事業者が行います。ただし、マウスピースやチューブといった消耗品の手入れは患者様ご自身で行っていただく必要があります。
外科手術
体型的、骨格的問題や鼻中隔弯曲などで気道に障害が生じているケースや、扁桃腺などの肥大によるいびきなどのケースでは外科手術を検討する場合もあります。手術は当院と連携する医療機関を紹介して行っていただきます。
ナステント
ナステントはシリコンチューブを鼻に挿入して眠ることで、いびきや呼吸障害を軽減する一般医療機器です。当院で、適切なチューブの長さを計測した上で処方指示書を作成します。これを事業者に示してご自身にあったチューブを購入することができます。
なお、ナステントは健康保険適用外です。