頭痛の種類・診断
「頭が痛い」「頭がズキズキする」という経験をした方は多いと思います。風邪などで熱がでたときなど、病気が原因のこともあれば、雨が近づいた、寒くなったなど天候の変化、疲れやストレス、女性の場合は月経の始まりなど、痛むきっかけ、頻度、持続時間などは様々です。
頭痛は原因によって大きく一次性頭痛と二次性頭痛にわけることができます。
とくに他の疾患がなくおこるのが一次性頭痛で、何らかの疾患が原因となっておこるのが二次性頭痛です。ご自身の頭痛がどのようなタイプなのかを見極めておくことは、頭痛への対処として大切なことです。
一次性頭痛
一次性頭痛は、頭やその他の部位に頭痛をおこすような明らかな異常は見られないにも関わらず、何年も繰り返し頭痛がおこっている状態です。頭痛の激しい症状によって日常生活に支障をきたしたり、精神的なストレスを感じたりすることはありますが、頭痛のために生命に関わるようなことはありません。主な一次性頭痛は慢性三大頭痛といわれる「片頭痛」「緊張型頭痛」「群発頭痛」が代表的なものです。生命にかかわらないといっても、激しい痛みが続くことで、仕事、学業、家庭での生活などに大きく影響しますので、お困りの方はご相談ください。
片頭痛
片頭痛は三大頭痛の中では、緊張型頭痛とならんで多いタイプです。原因は何らかのきっかけで脳の血管が拡張することでおこると考えられており、頭痛の程度は比較的重めで、中程度から重度の場合が多くなっています。頭痛は突然はじまり、4~72(3日)時間続くことが一般的です。
これまで片頭痛の特徴は、片側性と拍動性と言われてきました。片側性は片頭痛の名前の通り
頭の片側だけ痛むこと、拍動性は脈拍をなぞるようにズキンズキンとした痛みがあることです。
しかし、近年の研究で、4割程度の方は両側に痛みを感じたことがあることが分かり、また拍動性ではない頭痛がある方もいることがわかってきました。
片頭痛には何らかの前駆症状があらわれてしばらくすると頭痛がおこるタイプと、前駆症状がなく突然頭痛がおこるタイプがあります。前駆症状で一番多いのは、視界に突然ギザギザの幾何学模様があらわれて拡がって視界を塞いでしまう「閃輝暗点」で、その他にチクチクと四肢に痛みを感じる症状、言葉がでにくくなってしまうような症状を感じる方もいます。
頭痛とともに、感覚がいつもより鋭敏になって、光、音、においなどによって頭痛が増悪することや、動作によって痛みが強くなる、吐き気がして実際に嘔吐してしまうような症状があらわれる方も多く見受けます。
片頭痛は20~40代の女性に多く、女性ホルモンとの関係性も考えられています。
緊張型頭痛
緊張型頭痛は、ストレスや疲労などによって頭の筋肉や神経が緊張してしまうことでおこる頭痛で、慢性頭痛のなかでは一番多いタイプです。後頭部を中心に両側が頭を締めつけられるように痛むことが多く、頭痛の程度は片頭痛ほどではありません。片頭痛のように感覚が鋭敏になってしまうようなことはなく、首や肩のこりを同時に感じることが多いのが特徴です。
緊張型頭痛もやや女性に多くみられますが、片頭痛ほどの偏りはありません。
群発頭痛
群発頭痛は、ある日突然発症し、片側の目の奥が、眼球がえぐられるように激しい痛みにおそわれます。一度発症すると、年に1~2回、ずっと同じ場所で1日数時間痛み、それが1~2か月続きます。
痛みは激しく、世界三大激痛の一つに数えられることもあるぐらいです。痛みは睡眠中の明け方におこることが多く、中には眠ることが怖くなってしまう人がいるぐらいです。
群発頭痛は、比較的稀な頭痛で片頭痛や緊張型頭痛とことなり20~30歳代の男性に多いことが特徴です。
二次性頭痛
二次性頭痛は、頭や首などに頭痛を発生する原因疾患があっておこる頭痛です。中には脳出血や、頭部打撲などによる組織損傷によるものもあり、生命にかかわる重篤なケースも多いため、早急に受診する必要があります。以下のような症状がある場合、救急対応も含めて、迷わず受診するようにしましょう。
- 今まで体験したことのないような激しい頭痛
- だんだん痛みがひどくなってくる頭痛
- 身体の片側だけ痺れる、麻痺がある
- ろれつが回らなくなる、言葉がでてこない
- 片目だけ二重に見える、大きく歪んで見える
- 頭痛とともに高熱を発している
など
二次性頭痛の原因疾患としては、くも膜下出血、動脈解離、脳腫瘍、脳血管障害などが考えられます。
頭痛の治療と予防
頭痛の原因には様々な要因があり、それが患者様によって複雑にからみあって発症しています。これらの複雑な絡み合いを解きほぐし、その原因に応じて専門医による適切な治療を受けることが慢性頭痛解消への唯一の道です。
激しい痛みによる生活の質の低下から、つい市販の鎮痛薬を常用してしまいがちですが、毎日やみくもに鎮痛剤を服用することで、だんだん効き目が低下して、つい一日の用量を超えて服用してしまうことなどによって、かえってこじらせていまい、薬物乱用頭痛を発症し毎日頭痛に悩まされるようになるようなケースも珍しくありません。
また、近年開発された非ステロイド性抗炎症薬は鎮痛薬としても優れていますが、誤った服用方法によって痛み物質であり同時に胃粘膜の保護作用もあるプロスタグランジンの分泌低下を招き、胃炎や胃・十二指腸潰瘍を生じてしまうような事態も有り得ます。
専門の医師にしっかりと頭痛の原因の切り分けをしてもらい、適切な治療を続けることで、つらい慢性頭痛の症状が解決されることになります。
薬物乱用頭痛とは
薬物乱用頭痛は、本来的な一次性頭痛に対応するため、市販の頭痛薬を自己判断で服用しているうちに、だんだん効き目が薄れて、用法を超えて1日に何度も頭痛薬を服用してしまうことによっておこる二次性頭痛です。
鎮痛薬を常用することによって、脳はちょっとした痛みも我慢することができなくなり、薬の服用量が用法を超えて多くなってしまいます。それによって、さらに薬の効き目が低下してしまうという悪循環をおこしたものが薬物乱用頭痛です。
同じような頭痛なのに、だんだん我慢ができにくくなり、服薬量が増える、早朝から頭痛がある、頭痛の回数がどんどん増えて毎日頭痛がおきるようになったなどの症状があらわれた場合、薬物乱用頭痛を発症した可能性が高くなります。
頭痛の原因に合わせた治療
頭痛は鎮痛薬で「散らす」のではなく、その原因に応じて適切な治療をうけることが大切です。現代では、ストレスだけではなく、スマートフォン、パソコンなどの画面を見続けることによる視神経の興奮などの様々な要素が加わって頭痛がおこる要因は増え続けていると考えられています。また運動不足なども血行障害による頭痛の原因となりやすいことが考えられます。
頭痛は今ある激しい症状に対応する対象療法も大切ですが、根本原意を解消するための運動療法、生活習慣の改善なども、発症リスクの低下のためにも重要な要素です。
現代では、頭痛の種類によって適切な治療方法、治療薬なども開発されてきていますので、自己判断で市販の鎮痛薬だけに頼るだけではなく、専門地を受診して原因の解明や最適な治療方法、治療薬を見つけることが大切です。
鎮痛薬と予防薬の正しい使用方法・服用のタイミング
頭痛薬は、シャープな効果で一時的な症状の軽快がみられるため、つい自己判断で乱用してしまう傾向があります。しかし誤った服用法で鎮痛薬の使用を繰り返した場合、高い確率で薬物乱用性頭痛に移行する可能性についても報告があります。
肝心なことは自己判断で、市販の鎮痛薬を飲み続けることでおこる薬物乱用性頭痛です。ひとたび薬物乱用性頭痛になると、治療が難しくなってしまう傾向も高く、頭痛のコントロールが難しくなる傾向があります。
たかが頭痛と、自己判断によって鎮痛薬などでごまかしたりせず、医師に相談しながらコントロールしていくことが大切です。